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活劇としては楽しめるが~映画「ホテル・ムンバイ」 [映画時評]

活劇としては楽しめるが~映画「ホテル・ムンバイ」

 

 2008年のムンバイ同時多発テロを映画化した。伝統と外観の美しさで知られた五つ星のタージマハルホテルを主な舞台とした。

 事件後、テロリストの司令塔としてパキスタンのある組織が浮かび上がったが、詳細はつかめないまま今日に至っている。つまり、テロの背後関係は不明である。インドとパキスタンは独立後、宗教対立を核にした流血の歴史があるため、こうした事件との因果関係には簡単には踏み込めない部分がある。そうした中でこの映画は作られた。

 武装したテロリストとホテル従業員、宿泊客らの対決が大きな構図。テロリスト=絶対悪、対するホテル関係者と宿泊客=絶対善が座標軸となっているため、ナチスの所業を描いた戦争映画、ネイティブアメリカンと対決するかつての西部劇と基本的には変わらない。パニック映画でもあるという点で「タイタニック」ともつながる。

 従業員では貧民街に住むアルジュン(デブ・パテル)、宿泊客では乳児を連れた富豪夫妻、デイヴィッド(アーミー・ハマー)とザーラ(ナザニン・ボニアディ)、謎めいたロシア人実業家ワシリー(ジェイソン・アイザックス)あたりが目立った存在。後はテロリストとの追いつ追われつや従業員と宿泊客との不信と和解、生きのびたものと銃弾に倒れたものとの運命的な選別…。という形でドラマが構成され、最後はインド治安部隊が到着、テロリストを倒し事件は解決(このあたりは西部劇調)。

 それにしても、1300㌔離れたニューデリーからとはいえ治安部隊到着に数日かかるとは信じられない話。実際もそうだったのだろうか。軍用ヘリで運べば数時間で着くだろうに。そして、インド、パキスタンの抜きがたい宗教対立にどうしても目を向けざるを得ない。この歴史を描いた作品としては「ミルカ」が記憶に残る。ネイティブアメリカンとの容易ではない和解を描いた「荒野の誓い」も最近、日本で公開された。こうした作品と比べれば、やはり底の浅さは隠せない。

 小難しいことを言わなければそこそこ楽しめる活劇映画、ということになるのか。

 2018年、オーストラリア、アメリカ、インド合作。

 


ホテルムンバイ.jpg


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