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米国にもいた「ナンバー2」の男~映画「バイス」 [映画時評]

米国にもいた「ナンバー2」の男~映画「バイス」

 

 ナンバー2の美学というのがある。毛沢東に仕えた周恩来が頭に浮かぶが、日本でも野中広務あたりが当てはまりそうだ。ナンバー1を目指さないことで、ある種の「強み」を得る。そこから逆に、ナンバー1を操ることもできる。どちらかといえば東洋的思想が産み出した「ワザ」のように思った。しかし、米国にもいた。ディック・チェイニー。のし上がることを美徳とするこの国で、なぜこのような政治家が生まれたのか。それを探ったのが「バイス」である。

 1960年代、イェール大学に入ったものの酒浸りで退学処分となったチェイニー(クリスチャン・ベール)は、作業員としてケンカと酒の日々を送っていた。後に妻となるリン(エイミー・アダムス)に尻をたたかれ一念発起、ワイオミング大に入り直し、ワシントンで生きていくことを決意する。

 永田町は権力と嫉妬の海といわれるが、ワシントンもそうだった。そこで下院議員ドナルド・ラムズフェルド(スティーブ・カレル、後に国防長官)と出会う。さまざまな政治の裏技を伝授されたチェイニーは、歴代の共和党政権下で大統領首席補佐官、国防長官を務めたが心臓に疾患があり、治療ののち故郷でひっそり趣味の釣りをしながら暮らす、はずだった。

 しかし、ジョージ・W・ブッシュ大統領(サム・ロックウェル)から執拗な誘いがかかる。副大統領になってくれないかというのだ。この時点で巨大な軍事民間企業、ハリバートンのCEOだったチェイニーは飾り物のポストは嫌だといったんは断る。それでもめげない大統領に、それではと「特別な副大統領」の提案を行い、そのまま受け入れられる。ここから、「史上最強の副大統領」と呼ばれたワシントンナンバー2の歩みが始まる…。

 9.11後の米国をイラク戦争へと導いたとされる政治家の、権力の裏も表も知る人物像をよくとらえた作品。監督、脚本、製作アダム・マッケイ。2018年、米国。チェイニー、ラムズフェルド、ブッシュと、日本でもよく知られた顔ぶれだが、それぞれの役作りの競演も見もの。


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