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運命は大河のようにやってくるのか~映画「運命は踊る」 [映画時評]

運命は大河のようにやってくるのか

~映画「運命は踊る」

 

 テルアビブに住む老夫婦のもとに、息子ヨナタン(ヨナタン・シライ)が戦死したとの知らせが届いた。妻のダフナ(サラ・アドラー)はショックのあまり倒れる。夫のミハイル(リオル・アシュケナージ)も正気ではいられない。しかし、すぐに誤報だと知らされる。軍の対応にいらだつミハイルは、息子を返してくれるよう求めた。

 戦場での日々は退屈そのものだった。なぜ戦うのかもわからぬまま、待機のためのコンテナの傾き具合が気になった。ある日、通行車両の検問中に車から転がり落ちた缶コーヒーを手榴弾と勘違いしたヨナタンは機関銃を乱射、4人を射殺する。報告を受けた軍上層部は、なかったことにすると告げた。

 父親の願いが聞き入れられたか、ヨナタンは召喚される。しかし、その帰途…。

 ストーリーはシンプルである。しかし、散りばめられたパーツはそれぞれに複雑な意味が込められているようだ。検問所のヨナタンが踊るフォックストロットのステップ。彼が幼いころに書いた車とブルドーザーの絵。傾いていくコンテナ。これらは何を意味するのか。運命は大河のように我々を包み、いったん流れが動き始めると逃れることはできないと言っているようである。一方で、こうした「運命論」にそのまま同意できないのはなぜか。

 監督は「レバノン」でベネチア金獅子賞のサミュエル・マオス。2017年、イスラエル、ドイツ、フランス、スイス合作。いずれも一神教の国である。運命=神の意思とすんなり理解できる国と多神教の国の感性の違いを感じる。原題は「Foxtrot」。観たままを理解すればいい作品ではなさそうだ。頭の中でパズルの再構成がいる。

 

運命は.jpg

 


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