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出自が生む原罪感と共犯意識~映画「光」 [映画時評]

出自が生む原罪感と共犯意識~映画「光」

 

 この映画は、何を語りたかったのだろうか。人間の皮膚の下に潜む悪魔性。そうした解釈が頭をよぎるが、そう語ってしまうと違っている気もする。人間には、各々の出自に対する複雑な感情がある。どんなに飾り立て、気取ったところで、その出生地に行けばただの「餓鬼」に過ぎないのだ。キリストも結局は、人々の記憶の中では馬小屋で生まれた平凡な子どもに過ぎないのである。

 ふとしたことでのある行為が共犯意識を生み、原罪観とでもいうべきものを心の底に宿す。それが日常の皮層一枚下で生きのびる。この「光」もそうしたことを暗示しているように見える。

 区役所に勤める黒川信行(井浦新)は、妻・南海子(橋本マナミ)と子とともに平凡な暮らしを続けている。そこへかつての島の暮らしを知る輔(瑛太)が現れる。輔は南海子に近づき、信行はやはり島で付き合っていた女優・篠浦未喜(芸名、島では中井美花、長谷川京子)と不倫関係を続ける。3人が育った東京の離島・美浜島は津波に襲われ、今はない。その災害の直前、3人は異常な体験をしていた。

 美花と灯台守との性的関係を目撃した信行は、その灯台守を殺害する。その行為は輔に見られ、しかもカメラで記録されていた。津波の後、25年たって再会した3人は、それぞれに出自の秘密を抱えたまま、日常を破たんさせていく…。

 冒頭に書いたように、出自と、そこでの秘密の行為を共有することで生まれる不思議な共同関係(共犯関係)こそが、この映画のテーマとしてふさわしく、作品の広がりにつながるように思える。しかし、残念ながら映画の作りは「ホラー」の延長線にある。大森立嗣監督、2013年の「さよなら渓谷」には及ばなかったようだ。2017年製作。井浦新と瑛太は好演。


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