肉を切らせて骨を切る~映画「女神の見えざる手」 [映画時評]
肉を切らせて骨を切る~映画「女神の見えざる手」
議会ロビイストという、日本であまりなじみのない存在にスポットをあてたポリティカルミステリー。エリザベス・スローン(ジェスカ・シャステイン)は、勝つためには手段を選ばない辣腕ロビイスト。大手ロビー会社に所属していたが、銃規制法案をつぶす仕事を依頼され、それを断って規制法賛成に立つロビー会社に移る。米上院議員のうち賛否を明らかにしていない22人の争奪戦が始まる。
スローンは眠る時間も惜しみ、男は金で買って欲求を満たす。盗聴活動さえも辞さない。ある乱射事件の舞台になった高校の卒業生が部下にいることを知り、そうした体験さえもメディアに暴露して利用する。
彼女の奮闘によって、銃規制法をめぐる情勢は大きく好転した。危機感を覚えた銃規制派の大物は規制に賛成する米上院議員を抱き込み、スローンを喚問して倫理委員会を開く。インドネシアの税制改正にあたり、スローンが米議員に不当な利益供与を行ったというものだった。委員会では、スローンが言い逃れできいない自身の筆跡による書類が示された。最後の弁明の機会を与えられ、彼女は語り始める…。
彼女は倫理委員会を仕切る上院議員と規制反対派の大物との決定的な証拠を握っていた。倫理委が証拠として挙げた書類も、彼女の「自作自演」によるものだった。スローンは、自身が刑に問われることを承知で、倫理委員会で乾坤一擲の大勝負に出たのだった。
展開の速さとセリフの濃密さで、ついていくのがしんどいが、最後のどんでん返しは痛快だ。「議会ロビイスト」という存在への縁遠さを差し引いても、観る価値はありそう。閉塞感が漂う日本の政界でも、このぐらいのカタルシスは起こってほしいものだ。
2016年、米仏合作。意味不明な邦題より、原題「Miss Sloane」が潔い。主演のジェスカ・シャステインは「ゼロ・ダーク・サーテイ」が記憶に新しい。
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