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「朝鮮半島危機」に関するいくつかの疑問 [社会時評]

「朝鮮半島危機」に関するいくつかの疑問

 

 1994年以来の「朝鮮半島危機」が深刻化している。けさ(51日付)の新聞報道によると、稲田朋美防衛相が安保関連法に基づき、米国艦艇などを守る「武器等防護」を自衛隊に命じたという。これによって有事の際にはヘリ搭載型護衛艦「いずも」が米補給艦を防護する。補給艦は日本海を北上中の米原子力空母カール・ヴィンソンへの補給活動が想定され、これによって米朝間で戦闘が発生すれば、自衛隊も一体で戦うことが確実になった。

 

◆憲法9条との関連

 

 昨日のテレビでジャーナリストの青木理氏が指摘していたが、日本国憲法の9条第1項には「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」とある。第2項の「戦力不保持」「交戦権の否定」は「戦力」や「交戦権」の定義をめぐって議論の余地があるとしても、この第1項は解釈や読み替えが可能な条文ではない。もともと安保関連法自体が違憲だとする意見は多いが、現在、朝鮮半島沖でカール・ヴィンソンによって行われている米軍事力の誇示を自衛隊が一体的に支える行為は憲法違反ではないのか。青木氏も言っていたが、この視点からの議論が日本国内で巻き起こらないのは不思議である。

 

◆日本は米国の「盾」か

 

 現在の「危機」は、トランプ米大統領が北朝鮮の核兵器を深刻な脅威だと判断したことに始まる。その結果、北朝鮮と中国に軍事的な圧力をかけ、外交圧力によって北の路線変更を迫るという戦略が展開されている。

 しかし、知られているように朝鮮半島の38度線は「停戦ライン」であり、北朝鮮と韓国はいまだ準戦時状態にある。こういう状況下で北の目前に欧州中位国並みの空軍力を持つ原子力空母を置けば、偶発的な事態が起きることは予測の範囲内である。もし戦闘が起きれば、日本は間違いなく重要な標的になる。それは東京なのか、米軍の最新鋭戦闘機F35Bが駐留する岩国なのか。

 もともとは米国の「北の核は脅威」という認識から発生した事態の結果、日本国民が重大な脅威にさらされる、ということを日本の政治指導者はどう考えるのだろうか。日頃から安倍晋三首相は、「軍事を含むすべてのオプションがテーブルの上にある」という米政権の姿勢について「高く評価し支持する」といっている。これは、正しいことなのか。なぜ米国民の脅威解消のために日本国民が脅威にさらされなければならないのか。これは、基本的な疑問である。

 先日、あるテレビの街頭インタビューで「日本が巻き込まれるのではないかと心配だ」という声が紹介された。しかし、稲田防衛相の「命令」を見ても、現状は米国の戦争に日本が巻き込まれるという段階にはない。日米一体で戦争をする態勢が構築されている、と考えたほうがいい。極論すれば、日米安保が存在する結果として日本は脅威にさらされている。日米安保解消論を唱えれば「お花畑の議論」とする批判が起きるが、現状を見る限り、日米安保がなければこのような事態にはならなかったであろう。これを機会に「日本の防衛」についてフリーハンドの議論をすべきではないか。

 少なくとも安倍首相は、米政権の方針を「全面支持する」のではなく「軍事オプションは拒否する」と明言しなければならなかったと考える。

 

◆「いずも」という空母は何を守るのか

 

 さらに、冒頭の米艦防護の話に戻るが「いずも」はどのように米艦を守るのか。専守防衛の憲法を持つ国の戦力だから護衛艦と名乗っているが、「いずも」は艦橋が船体の端にあり、通常の艦船の定義では空母のはずだ。空母は通常、戦争状態かそれに近い状況の中で相手国の近くで最前線基地の役割を担う。防衛ではなく攻撃のための艦船であるはずだ。このような艦船が、緊張下の朝鮮半島の間近にいることがどういう意味を持つか。「防護」の範囲にとどまらず、カール・ヴィンソンと同じく「脅威」を相手国は感じるのではないか。



いずも.jpg護衛艦「いずも」(海上自衛隊HPから)



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