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広島と沖縄 死者との対話A・ビナード×三上智恵㊤ [社会時評]

広島と沖縄 死者との対話
A・ビナード×三上智恵㊤


 広島市内で4月16日、三上智恵監督「標的の島 風かたか」の上映後に詩人のアーサー・ビナードさんと三上監督のトークがあった。沖縄の情況は日本の民主主義の在り方にかかわるといった視点にとどまらず広島との思想的な関連性、特に死者との対話に議論が及んだ。以下、トークの要約(3回続き、文責asa)
 
 A・ビナード)辺野古で、高江で、沖縄で思うことは、国家は国民のために存在していない。僕らがそのことを実感せずに生活しているなら、あんぽんたんだ。
 三上智恵)私が沖縄で映画を作っているのは、沖縄の負担が大変だから、ではない。この国が劣化してしまって、足元の幸せとか平和とか安定とか安心とか、ここまで崩れているのになんで全国の人たち気づかないんですか、と思って作っている。
 ビ)沖縄が大変だとか思っていたら現実は何も見えない。今の広島の思考停止とあんぽんたんぶり、広島がすべてを失う崖っぷちに立っていて飛び降りる寸前の状態になっていることを沖縄が照らし出しているから、沖縄をちゃんととらえなければいけない。沖縄の問題ではない。
 三)沖縄の問題を全国の人が考えてあげないといけないというレベルの問題ではない。沖縄にいるから分かる、沖縄でははっきりと断層の地層が見えるというものがある。沖縄でニュースキャスターを20年やって、全国に伝えないといけないことがたくさんあった。それは沖縄が大変だということではなく、あなたの国の民主主義はないですよ、この国の平和はもう終わりましたよということ。これからは共謀罪だけど、私は戦争に向かう最後の大きなカギは特定秘密保護法だったと思っている。あれを許してしまってほとんど戦前の法律は完成したと思う。もちろん戦争法も、念を押すようにできてしまった。止められないところまで来ている。
 ビ)特定秘密保護法とセットに進められたのがマイナンバー制度。三上さんは戦前の法整備が済んだというけれど、戦前の方がまだましだった。戦前は戸籍が悪用されたが、米政府にも利用されるマイナンバー制度という日本語を介しない形で日本民族の支配が完成した。
 三)マイナンバーも、みんなが従順でなければ止められたと思うが。
 ビ)5000万人がいらないっていえば制度そのものができなかった。しかも、ひどいネーミングだ。税務署に行くとこういう顔をしているから英語で聞かれる。「What Your My Number?」。Your My Numberって何。そういう中でどうするか。沖縄とつながると、いろんな人が多様性を保ちながらつながっている。それを僕らにお手本として提供してくれている。

米軍も自衛隊も一体

 三)「標的の島」を見終わっての感想は。
 ビ)重要なことを理屈ではなく感覚を伴った形で伝えた。米軍帰れとか、アメリカにこんなに基地を押し付けられているとかではなく、米軍も自衛隊も同じ組織だということ。宮古と辺野古と高江をつなげて描くと、それがよく分かる。おととしから米軍とか自衛隊とか米政府とか日本政府とかではなくて同盟調整グループ(Alliance Coordination Group=ACG)という組織がアメリカ国防総省、カタカナでいうとペテンタゴンが中心になってできた。その下請け組織が日本の防衛省。宮古に自衛隊基地ができるのと辺野古に米軍基地ができるのとは、同じ組織の出先機関が違うだけ。あるいは軍服を着ている人間の顔が違うだけ。同じ組織が進めていて、この映画で伊波洋一さん(参院議員)も明確に言っていたが、先島を戦場に想定して計画を進めている。それがこの映画ですごくよく分かる。
 三)アメリカ軍基地への反対は沖縄で8割がそうだ。しかし、辺野古は普天間の代替施設といわれると、これがまたペテン。辺野古新基地を造らずに普天間基地をなくしても、沖縄への米軍基地集中度は74%が73%にしかならない。この73%は、8割のオール沖縄を支える大多数の県民がいいといって、まだ負担していくつもりでいる。でも、普天間は無条件で返してくれてもいいんじゃないのか。それも許されないのか、というところなんです。ここが勘違いされている。アメリカの基地への反対は沖縄の中でも理解される。でも自衛隊に反対するとなると微妙だ。自衛隊には沖縄の出身者が多い。沖縄の離島から東京、大阪の大学に行かせると一人あたり2000万円弱かかる。一人大学に行ったらほかの兄弟はあきらめるという中で、防衛の学校に行けば資格も取れるし生活費ももらえる。そういうところに多くの人が行ってしまうのは沖縄の地域がら仕方ない面もある。だから自衛隊には反対論が言いにくい。でも米軍基地の問題だけ扱っていたら、いま私たちが迎えてしまった危機が説明できない。宮古島と辺野古・高江のことを一緒にやるとせわしなかったと思うが、でも米軍基地と自衛隊はいま全く一緒に考えないといけない。南西諸島の軍事要塞化ととらえないと何も本当のことが分からない。それは、沖縄が戦場になるということではなく、日本が戦場になる、その導火線を今作っているということだということをどう2時間で表現しようかと、編集作業は死ぬ思いだった。
 ビ)日本は思いやり予算という金を自分から出して導火線を引いている。米帝国と中国帝国が軍産複合体を維持するためにそれをやっている。中国もアメリカも全面衝突なんて考えていない。だからペテンが成り立つ。戦争をやりたいんなら核ミサイルを撃ち込んで人類を終わりにすればいい。しかし、戦争をやりたくないなら、戦争がない形で解決するしかない。
 三)米中はお互いに経済的なダメージをどの辺まで抑えて戦争するか、お互いに検討している。そして一緒に軍事演習なんてやっている。不思議なことだ。
 ビ)世界の歴史の中でこんなに経済的に依存しあった大国はない。
 三)そこで、お互いの国ではないところで軍事衝突が起きるとしたら、海上限定戦争しかないという結論に今達しているが、その海上限定戦争の舞台にされている島々は私たちが住んでいるところだ。この島々で戦争が終わるはずがなくて、もし沖縄本島が巻き込まれるとアメリカが巻き込まれて長期化する。そのアメリカのシンクタンクの人たちがエアシーバトル構想についてシミュレーションしたところでは、中国はミサイルの飛距離が伸びたので、戦闘機や船を出さなくても(先島を)直接攻撃できる。でもそうなったら、アメリカ軍は半日でグアムのラインまで撤退することになっている。それが2006年の日米合意。だってアメリカ軍には、この島に残って最後まで戦う義理はない。いったん撤退して頃合いを見て奪還に来るが、初期攻撃に対応するのは同盟国軍だと書かれている。同盟国軍とは日本軍、韓国軍、フィリピン軍。ドゥテルテ大統領は頭がいいから巻き込まれないためにアメリカと距離を置いている。中国との経済関係、信頼関係を築くことで、アメリカの代理戦争をさせられて自国の兵隊が犠牲になる、もしくは自国の国土が戦場になることを避けようとしているる。でも日本と韓国は、このまま行くと自国の領土を戦場に提供し、真っ先に死ぬのは日韓の若者ということになる。そして、初期攻撃に対応するのは日本の軍隊だが、沖縄は2週間で陥落すると書かれている。次のバトルゾーンは西日本。それが「やまさくら」という訓練で、ネットで簡単に見ることができる。沖縄にいると、アメリカ軍と日本軍がどこでどう訓練しているかがニュースになる。でも、本土では全くニュースにならない。だからみんな、アメリカが日本を守ってくれているというところで思考停止している。


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