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絵と道具立てはいいが~映画「君の名は。」 [映画時評]

絵と道具立てはいいが~映画「君の名は。」

 

 国内興行収入で100億円を突破、各界から絶賛されているという「君の名は。」を観た。結論を言えば、精緻で美しい絵に比べて主人公のキャラの底の浅さが目立ち、感情移入できない印象だった。

 ある田舎の少女・宮水三葉と都会の少年・立花瀧の心が、ある日以来たびたび入れ替わる。この仕掛け自体はこれまでにも使われ(大林信彦「転校生」など)、目新しいものではない。しかし、これにある宇宙規模の出来事と過去の組み換えというSF的要素を組み合わせたところに、興業的成功を生んだ要因があると思われる。

 ストーリーの骨格は一応面白く、都会と片田舎という舞台設定とその魅力を十分に引き出した絵のうまさには感心するのだが、三葉と瀧のキャラクターが貧弱で薄っぺらすぎるのだ。したがって二人の出会いと別れ、そしてまた出会いという展開に感情移入できない。この映画を見て涙したという感想を目にするが、その心理が今一つわからない。別の言い方をすれば、もともと恋愛関係にあったわけでない二人が、ある惨劇の現場でどうして「好きだ」と打ち明けてしまうのか理解に苦しむし、よみがえりのための過去の改変になぜそこまでこだわるのかも、今一つ説得力がない。例えば「くちかみ酒」を飲むと過去にさかのぼれるという仕掛けも唐突に出てくるし、そんな怪しい酒をためらいなく飲むという瀧の行為にも納得がいきかねるが、ファンタジーだからよしとするのだろうか。

 絵とストーリーが先行し、人間が貧弱というのが私の偽らざる感想である。

 そのうえでいえば、スマホによる記憶の共有と村の神事、シャープな都会のビルと村の自然という現代日本の新旧の両極ともいえる「風景」はよく描かれ、その背景にある不条理感や逃れがたい宿命との葛藤という得体のしれないものの存在をにおわせているところが、この作品の魅力といえなくもない。

 

 

君の名は.jpg


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