山岳映画と期待しないほうがいい~「ヒマラヤ~地上8000㍍の絆~」 [映画時評]
山岳映画と期待しないほうがいい~
「ヒマラヤ~地上8000㍍の絆~」
韓国が作った本格的な山岳映画、という触れ込みで、期待して観たが…。うーむ。これは山岳映画なのか。少し違うような。
8000㍍峰14座を世界で9番目に登った韓国の登山家、オム・ホンギルの実体験を映画化したといわれる。14座登頂を機に、登山家としては引退したホンギル(ファン・ジョンミン)は、ヒマラヤ4座を共にした後輩パク・ムテウ(チョン・ウ)ら3人がエベレストで遭難したとの報を受ける。そこは標高8750㍍、遺体回収など考えられない過酷な場所である。それでもホンギルはかつての仲間に呼びかけ、ムテウを山から降ろそうとする。かつての仲間は二の足を踏む。生活を捨て、死を覚悟して何の名誉にもならない遺体回収に加わるなどということは、考えられないのだ。ホンギルはやむなく単独で乗り込むことを決意する…。
しかし、一人、二人と仲間が集まり、遭難したムテウらを除く全員がそろった。生活も名誉も捨てて、かつての仲間を山から降ろすためだけに、集まったのだ。そして、エベレストへの過酷な旅が始まる…。
日本で山岳映画といえば、アルピニズムをめぐる論争やら個人と組織の軋轢やら、ついでにロマンが絡んで最後は自然賛美、というパターン(この部分、クラシカルモデルは井上靖「氷壁」)だが、そういったものはいっさいない。ただベタに人間関係が描かれる。日本と韓国の国民性の違い、ということなのだろうか。
山岳シーンは風景、演出ともに、こういっては何だがチャチである。例えば8000㍍を超す地点でみんな酸素マスクもせず敏捷に動き、絶叫する。もともと名誉を求めた登山ではないので、初めから酸素マスクをつければいいのだが、みんなそんなことはしない。が、動きは精力的である。この辺の描写が嘘っぽい雰囲気を醸す(あとで気づいたが、酸素マスクをすると誰が誰か分からなくなることを懸念したのだろうか。それならそれで何か工夫のしようがありそうな)。
終わってみれば山はそっちのけでひたすら熱い人間ドラマ。同じストーリーでも、おそらく日本ではこうは作らないだろうなあ、と嘆息した。
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