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正攻法のジャーナリズム~映画「スポットライト」 [映画時評]

正攻法のジャーナリズム~映画「スポットライト」

 

 ジャーナリストのプリミティブな姿を、あくまでも正攻法で描いた映画。これまでにも、調査報道によってR・ニクソンを追いつめた「大統領の陰謀」という優れた作品があったが、それに類する作品である。通常、ジャーナリズムの標的は政治権力になりがちだが、ここではカトリック教会がターゲットになっている。米国のエスタブリッシュメントは「プロテスタント」で、そこは微妙に外してはいるものの、米国が巨大な宗教国家であることは間違いなく、したがって地域に根を張る権力構造と腐敗ぶりも並大抵でないことは想像がつく。

 冒頭述べたように、あくまでも正攻法の映画だから、ストーリーは単純である。ボストン・グローブ紙に、新任の局長がやってくる。やや停滞気味の紙面に対して彼は、一つの注文を出す。カトリック教会の性的幼児虐待を取り上げ、同紙の特集面「スポットライト」で扱えというのだ。この面の担当記者はわずか4人。過去の、紙面の埋め草に使われた簡単な記事を手掛かりに、教会スキャンダルの追及が始まる。しかし、これを一過性の醜聞報道に終わらせないため、局長は、狙いは大司教ではなく教会のシステムだと明言する…。

 ボストン・グローブ紙は「地方紙」として紹介されることが多いが、米国では、日本のような「全国紙」が少なく、ほとんどが地方紙である。それを考えると、発行部数50万部弱のボストン・グローブは米国でも有力な新聞と言えよう(ちなみにいえば、米国の全国紙とはUSAトゥデーやWSジャーナルあたり。NYタイムスはローカル紙の構造を持つが、全国紙の性格に近い)。

 取材の手法は、冒頭に書いたように極めてプリミティブである。まず周辺で事実を固め、裏を取り、本丸(教会幹部)に迫っていく。相手が逃れられないかたちで全体の構図を描いたうえで、最後に大司教のコメントを求める。

 ある意味で、これは米国の健全なジャーナリズムと強靭な市民社会の精神を、あらためて我々に教えてくれる。翻って見れば、日本のジャーナリズムの体たらくを思い知らせる作品でもある。

スポットライト.jpg


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