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川上氏の背後に見えるものは何?~社会時評 [社会時評]

川上氏の背後に見えるものは何?~社会時評

 

 ショーン・マクアードル川上という、テレビ朝日「報道ステーション」のコメンテーターが学歴などを詐称していたと、週刊文春3月24日号が伝えた。

 今いうのもなんだが、この人が画面に登場した時、何か不自然なものを感じたものだ。文春の「詐称」報道を受けて、「(見た目の良さと低音の語り口が)戦略的に思え違和感があった」との見方があったが(宣伝会議編集室長・田中里沙氏)、その感覚に近い。マーケットリサーチをして商品を生み出すように、戦略的に作り上げられたキャラクターとしてかつて「ピンクレディ」がいたが、今回のショーン・マクアードル川上氏(本名・川上伸一郎、以下、川上氏)をめぐる事件も、似た構造を感じる。

 NYで生まれハーバード大のMBSを取得、そのうえ二枚目、低音、経営コンサルタントとして年商数十億円、と来れば、何もかもそろいすぎている。しかも、「米国」を経歴に巧みに取り入れ、日本人の「コンプレックス」を巧妙にくすぐる。なんとも「戦略的」である。

 しかし、その割に、コメントから専門分野が見えてこない。政治も経済も日米の文化も語るが、深みがない。一夜漬けで資料を漁り、頭に入れ込んだ図式を一生懸命に語る。そんな印象が強かった。

 この文章を書くために、川上氏の「ウィキペディア」を検索してみた。すると、肩書は「タレント」とある。急きょ書き換えられたものかもしれないが、これなら納得である。米国生まれの高学歴の経営コンサルタントを演じるタレント川上氏が、テレビでそれなりのコメントを発する。見ているものは、それはそれで、納得する。ついでに画面上の見栄えもいい。で、それでなぜいけないの、となる。ハーバード大の修士をとった人間が、一タレントよりも気の利いたコメントを出せるはずだとだれが決めたのか。

 テレビ界はいまや、コメンテーター花盛りである。朝は朝からワイドショー。昼は昼で、やはりワイドショー。夕方もある。そして報道ステーションやTBS「ニュース23」になだれ込む。視聴者はそこでコメントを聞いて何を納得するのだろうか。このニュースの見方や分析方法は、この人の言う通りだと安心したいのだろうか。そのためには「ハーバード」という肩書も役に立つというものなのだろうか。

 川上氏の目くらましは「戦略的」にこれ以上ないほど見事だったし、その分うさん臭かった。しかし、その向こう側に透けて見えるコメンテーターの市場ニーズとはいったい何なの?と問いたくもなる。それは、テレビっていったい何? 視聴者がテレビに見ているものは何? ということでもある。そう、視聴者は川上氏の背後に何を見たのだろうか。


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BUN

視聴率が、あるからです。秒単位で視聴率が表示され、TVマンはその動向に支配される。TPPの動向よりベッキーの動向の方が、残念ながら大切なんです。なぜなら、TVを昼間見ているのは、主婦とおばさんだから。年金生活の老人も。アナウンサーがTPPのニュースを始めたとたん、チャンネルは変えられるんですね(^_^)。
by BUN (2016-03-18 22:52) 

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