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「監視社会」を素材に、緊迫の展開~映画「監視者たち」 [映画時評]

「監視社会」を素材に、緊迫の展開~映画「監視者たち」

 近未来は超監視体制→自己監視体制と保険によるリスク管理で国家そのものが不要になる、と言ったのはジャック・アタリ「21世紀の歴史」だが、むろんこれはバラ色の未来なるものではない。すべての公共の場所には超小型センサーが置かれ、「オブジェ・ノマド」自体にもこれに対応する機能が埋め込まれる。そのとき、大衆は「データ」そのものになる。

 監視カメラ、ストリートビュー、カード社会、そして国民総背番号制。斎藤貴男は、一連のこうした動きを「安心のファシズム」と名付けた。

 でも、ここでは、その問題はひとまず置くとしよう。

 この超監視社会を治安対策的に見ると、どうなってどういうドラマが出来上がるか。そう考えたときに、この韓国映画「監視者たち」にたどり着くのである。舞台は犯罪組織監視班。街の動きを「ただ見る」ことに徹して、犯罪者の検挙に結びつける。もちろん、漫然と見ていればいいわけではなく、深い洞察と類まれな記憶力を必要とする。その監視班に、ある日若い女性刑事ハ・ユンジュ(ハン・ヒョジュ)が送り込まれる。彼女の上司ファン・サンジュン(ソル・ギョング)は、武装犯罪グループの完全主義者ジェームズ(チョン・ウソン)と対決する…。

 冷徹な暴力と秒単位の緻密な犯罪計画。そこに挑む警察知能集団。スリルに満ちた展開。なかなかに魅力的な女性、ユンジュの現場での成長物語が織り込まれ、ストーリーの運びの巧さは、さすが韓国映画である。「息つく暇もない」という表現が当たるだろう。韓国内で大ヒットしたというのもうなづける。日本であまり話題になっていないのは、やはり「監視社会」へのアレルギー、もしくはそれへの批判に対する遠慮か。とりあえずは、目の付けどころに感心。

監視者たち.jpg 





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