旅におぼれて~現代史の現場を歩く⑤~ベルリン㊥「テロル」の記憶 [旅におぼれて]
旅におぼれて~現代史の現場を歩く⑤~
ベルリン㊥「テロル」の記憶
ベルリン市街の南にある壁博物館から西へ1区画分、200㍍ほど歩いたところに「テロのトポグラフィー(TOPOGRAPHIE DES TERRORS)」がある。ガラス張りの明るい博物館風の建物で、広いフロアには写真とテキスト(ドイツ語と英語)がパネルに張って展示してある。国立で入場は無料。軽食コーナーもあり、サンドイッチなどで昼食を済ませることもできる。
展示してあるのは、ナチが政権を奪取した1933年からベルリンが爆撃によって廃墟と化した1945年まで。その間のナチスドイツによる悪行が、分かりやすく示してある。訪れたのはたまたま日曜日で、そのせいもあってかほとんどの入場者が真剣な面持ちで見いっていたのには驚かされた。中には熱心にメモをとる姿も見られた。そして、年齢層、男女、いずれも偏りがあるようには見えなかった。この展示物は広く市民に共通の財産として認識されているように思えた。
「トポグラフィー」は日本語に訳しにくい。強いて言えば「地形学」あたりだろうか。「テロ」はもちろんナチによる恐怖政治を指している。この名前の由来は、この建物のすぐそばにある遺跡からきている。
もともとこの地はナチ親衛隊(SS)とゲシュタポの本部があったところで、当時の地下牢跡とその後建てられたベルリンの壁跡が今も残っている。ベルリンの東西分断が終わった時、これらの「遺跡」に説明のためのパネル板が置かれ市民が訪れていたが、2010年に現在の建物が建てられ、説明板は館内に展示された。
入場した市民の真剣なまなざしを見ていると、恐怖の時代は繰り返すまい、という気持ちが伝わってくる。このことは、ブランデンブルグ門から歩いて10分ほどのところ、つまりベルリンのど真ん中のかなり広いスペースに、ナチによって犠牲となったユダヤ人の慰霊碑があることでもわかる。
「テロのトポグラフィー」の正面入り口 |
「国家社会主義者による政権奪取」から、展示は始まる |
ヨーロッパ全土からアウシュビッツにユダヤ人らが集められたことを示す地図 |
アイヒマンと強制収容所のもようを示す写真 |
残虐さを表す写真も、もちろん展示してある |
熱心にメモをとる市民 |
1945年、廃墟と化したベルリンの写真で展示は終わる |
建物を入ってすぐのところにあるパネル |
「テロのトポグラフィー」のすぐそばにある、かつてのナチの地下収容施設跡とベルリンの壁の跡 |
ブランデンブルグ門の近くにあるユダヤ人慰霊碑。それぞれ、微妙に高さが違う。犠牲者の多さを表しているとも言われる |
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