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どんな人生だって宝石なのだ~映画「ペコロスの母に会いに行く」 [映画時評]

どんな人生だって宝石なのだ~

映画「ペコロスの母に会いに行く」


 原作の漫画は知らなかった。「ペコロス」は小さな玉ねぎのことらしい。団塊世代の岡野ゆういち(岩松了)は、若いころに手を染めたフォークソングと漫画を手放せないでいるダメダメサラリーマン。見事なはげ頭をネタに、付けたステージネームが「ペコロス岡野」。妻には離婚され、母みつえ(赤木春恵)、息子のまさき(大和田健介)と長崎で暮らす。

 父さとる(加瀬亮)の死を契機に、母はめっきり老いが進み、認知症が進行しているようだ。家に一人残すわけにもいかなくなり、介護施設へ預けることを決意する―。

 高齢化社会を絵に描いたようなストーリーだが、描写はけっして深刻ではなくユーモラスだ。しかし、この作品のすごさは、その先にある。

 きれぎれによみがえるみつえの記憶。ときに、夫の死さえ判別がつかない。そんな彼女の脳裏に、これまで歩んだ人生が走馬灯のようにかけめぐる。酒乱と暴力に明け暮れたさとるとの日々。長崎原爆で失われた命のこと。それらは涙なしには語れないのだが、みつえにとってはかけがえのない日々である。

 監督・森崎東。軽妙さの中に重さがあり、重さの中にユーモアがある。平凡に見えるどんな人生だって、その奥には宝石のような輝きがある、と言っている。森崎東の手堅い演出に拍手だ。赤木春恵の「怪演」にも。そしてキネ旬1位、納得だ。

 ペコロス.jpg


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