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日本に基地が本当に必要か~濫読日記 [濫読日記]

日本に基地が本当に必要か~濫読日記


「防衛融解 指針なき日本の安全保障」

 防衛融解_001.JPG「防衛融解 指針なき日本の安全保障」は旬報社刊。1500円(税別)。初版第1刷は201071日。著者の半田滋氏は1955年生まれ。下野新聞を経て東京新聞編集委員。93年防衛庁防衛研特別課程修了。著書に「闘えない軍隊」(講談社)など。











  「最低でも県外」と大見えを切った鳩山由紀夫首相が一転「県内移設」を表明した2010年5月、「学べば学ぶほど沖縄は抑止力」と発言したが、いまだにこれは意味不明の「迷言」である(もっとも鳩山氏自身は翌年「方便だった」と事実上撤回したが)。

 なぜだろう、とつくづく思うのだが、沖縄にこれだけ米軍基地が集中し(米軍専用基地の75%が集中している。よく「米軍基地の75%」と表記されるが、これは正確に言えば間違いである。本来は「専用基地」と断らなければならない)、沖縄県民がこれほど怒っているのに、政治は沖縄しか選択肢を示せない。これはどこに起因しているか。

 「冷戦対決の時代ならともかく、冷戦後はイラク戦争へ、アフガニスタン攻撃へと、席が温まる暇もなく、出撃を繰り返している在日米軍は日本を便利に利用しているだけではないのか」

 「防衛融解」の著者も、同じ疑問を抱いている。冷戦が終わって、ヨーロッパは軍備削減が急速に進んでいる。イラク戦争は終結し、アフガンから米軍撤退が始まり、米国は極東と中東の同時戦争を想定した「2正面作戦」放棄を宣言した。いうまでもなく、米国の巨大赤字の重圧のせいである。このような状況の中で日本は米軍基地に「思いやり予算」をつけ、治外法権に近い厚遇を続けている。

 一方で、いっさいの軍隊を否定する「絶対平和主義」を全面否定するものではないが、それは多数の支持を得る道にはつながらないだろう。現実的な発想の中で軍縮と戦争回避の道を探るべきだろう。

 そう考えると、日本の防衛はなんと「指針なき航路」を歩んでいることか。いったい、日本にとっての仮想敵国とはどこなのか。北朝鮮が本当に戦争を仕掛けてくると思っているのだろうか。あるいは中国か。それを一つ一つ、具体的に語らなければならない。

 「防衛融解」の著者は東京新聞記者。「戦地』派遣 変わる自衛隊」(岩波新書)を著した防衛問題のエキスパートである。スタートは1992年の防衛庁取材だと言うから、もう20年近いキャリアがある。したがって、体験とデータで構築した防衛論は説得力に富む。

 もういい加減で、日本独自の防衛戦略を持つ時代が来てもいいのではないか。「絶対平和」と「日米安保」の対立だけでは不毛である。しかし「国防」を議論する党内機関を持たない民主党では、この問題の対処はとても無理だろう(なにせ、党内には冷戦下での社会党から自民党までいるんだから。55年体制の総括を成し遂げての結党ならまだ分からないこともないが)。

 これを読めば、日本がいかに米国の都合のいいように利用され、引き回されているかがよく分かる。

ドキュメント 防衛融解  ~ 指針なき日本の安全保障

ドキュメント 防衛融解  ~ 指針なき日本の安全保障

  • 作者: 半田 滋
  • 出版社/メーカー: 旬報社
  • 発売日: 2010/06/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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