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ある女性の過酷な運命~映画「灼熱の魂」 [映画時評]

ある女性の過酷な運命~映画「灼熱の魂」

 中東で生まれカナダに渡った母は、双子の我が子、ジャンヌとシモンに手紙を残してこの世を去る。それを行方の知れぬ父と兄に渡してほしいと遺言を残して。二人は中東、レバノンと思われる戦火の国に向かう。たどりついた母の故郷で、二人は歓迎されざる身だった。

 異宗教の男女の愛。テロの応酬と長い牢獄生活。拷問のエキスパートの登場。こうした、母のたどった過酷な歩みはしかし、徐々に明らかになっていく。一方、核心に近づくにしたがって、関係者の口は重くなっていく。

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 全体を一言で言えば、中東といういま最も非人間的な地域で人間的に生きようとした一人の女性の痕跡を、乾いた大地の向こう側に探そうとする旅の記録。だが味付けはメロドラマのようでもある。そのあたりをどう見るか。

 原作はレバノン出身のカナダ人劇作家。カナダ・フランス圏とフランスによる合作映画。そのためだろうか。フランス語のセリフが、ひりひりするような舞台設定との相乗効果で独特の味わいを出している。

 オイディプスの悲劇を見るかのような結末が、中盤の冗漫さを消してなお余りある。

 やっぱり戦争はいけない、人間性を苛烈に奪っていく、と結論を出したいところだが、パレスチナからこの映画はどんなふうに見えるのだろうか、と少し気になる。


 

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