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職人技に感動~映画「ゴーストライター」 [映画時評]

職人技に感動~映画「ゴーストライター」


 「戦場のピアニスト」に続くロマン・ポランスキーの作品である。いつもながら、職人技とも言えるち密な演出は感動ものだ。始まりも終わりもさりげない。それでいて、味がある。

 元英国首相アダム・ラング(ピアース・ブロスナン)の自叙伝の執筆を依頼されたゴーストライター(ユアン・マクレガー)は、ラングが住む孤島を訪れる。そこで取材を進めるうち、ラングの経歴に不自然な点を見つけ出す。彼の前任者マカラは、謎の死を遂げていた…。

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 元首相ラングはイラク戦争に加担し、アルカイダ系の容疑者を不当に拘束した疑いで国際刑事裁判所に訴えられる。ここまで書けば、モデルはトニー・ブレアだと分かる。ここに、CIAにつながる謎の大学教授や軍事代行業「ハリバートン」を思わせる企業が登場、陰鬱な米東海岸の冬の風景(ロケ地はヨーロッパらしい)が重なり、ヒッチコックのようなサスペンスを生みだす。印象的なのはラングの住居の周辺で使用人が枯れ葉を集めるシーン。集めても集めても、枯れ葉は風で吹き飛ばされる。無意味とも思える作業のショットを挟みこむことで不気味さが倍増する。演出の妙だ。

 とはいえ「策におぼれた」と思われる個所もいくつか、ないわけではない。マカラが乗っていた車のナビから彼の行動範囲を割り出すシーン。殺人が疑われる事件の被害者が乗っていた車のナビぐらい、捜査当局が押さえているだろう。マカラの私物がそのまま部屋に残されているのも不自然だ。「ザ・ゴースト」は、ある人物とCIAとの関係を割り出す決め手となる、マカラが書いた自叙伝に埋め込まれたセンテンスの掘り起こしに成功するが、マカラはなぜそんな手の込んだ仕掛けをする必要があったか。ラングの政敵に直接伝えれば済んだのではないか。

 難点もないわけではないが、最後に原稿の束が風に飛ばされていくシーンは絶妙だ。ラングが狙撃される場面を除けば流血はなく、それでいてサスペンスたっぷりというしゃれた作品だ。英仏独の合作。アメリカ映画だとこうはつくれないだろう。元首相のピアース・ブロスナンは好演。総じて言えば演出90点、シナリオ60点あたりか。

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