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素材は一級、テイストがあいまい~映画「ハンナ」 [映画時評]

素材は一級、テイストがあいまい~映画「ハンナ」


 雪深いフィンランドの森で、父と暮らす16歳の少女ハンナ(ソアーシャ・ローナン)。彼女はあらゆるサバイバル技術を父エリック(エリック・バナ)に叩き込まれている。ある日、父のもとを離れる決断をする。ターゲットはCIAの女性捜査官マリッサ(ケイト・ブランケット)。父もまたかつてCIA捜査官だった―。

 彼女は拉致され、モロッコのCIA秘密基地に監禁されるが、なんなく逃亡する。その後は、次々と襲い来るCIA工作員を驚異のテクニックでせん滅する。細かいストーリーはあるのだが、それをここで紹介しても意味がない。ただただ、16歳少女が屈強な工作員を苦も無く倒すシチュエーションに意味がある。で、それで満足すればいいかというと、そうもいかない気がするのだ。それは何か。


 ハンナ1.jpg

 素材=シチュエーション=少女ハンナのキャラクターは一級である。ただその展開がなんとも味気ないというか、薄味である。雪原のヘラジカ猟に始まる前半はサスペンスの味わいがあり、まずまず。ところが、アクションが増える後半になるとなぜか間延びする。緊迫感がいま一つ感じられない。だからこの映画はクールなハードボイルドで行くのか、文明との遭遇で葛藤する少女の内面を含めたドラマで行くのか、曖昧なのである。

 そしてこの間延び感のもう一つの理由。アクションの帰結としての殺人という行為が極めてソフトに描かれている(演出上の意図があるかもしれないが、観る側には伝わってこない)。

 そんな中で面白かったのは「音楽」という概念にこの映画のテーマ性を付与したことである。音楽―映画の中では「音の美しい構成によって感情を表現すること」とされるが、この「音楽」を、ハンナは父から教わっていない。従って彼女は「音楽」を理解することができないでいる。つまり、人間の感情のある部分を、ハンナは欠落させている。このことが、映画の結末、謎解きの部分に関わってくるのである。CIAのある計画と、ハンナの肉体構造を結びつける秘密が明るみに出る。

 細かい理屈をこねなければ、もちろん文句なしに楽しめる映画である。監督は2008年公開「つぐない」のジョー・ライト。

 ハンナ2.jpg

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