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速報・五輪説明会大荒れ [社会時評]

 速報・五輪説明会大荒れ

 昨日(22日)夜、広島市南区の地域福祉センターで、2020年に招致が検討されているヒロシマ五輪の説明会があった。広島市民に対する五輪計画の概要説明は区ごとに21日から30日まで計8回。これが最初で、おそらく最後になるだろう。しかし説明会は反対論が相次ぎ、大荒れになった。なぜか、けさの朝刊各紙は掲載なし。21日はスタートだからニュース性があったが2回目は新味なく関心なし、ということだろうか。新聞が報じないのでこのブログで雰囲気だけでも伝えておきたい。
 会場は定員120人ということだったが、訪れた市民はざっと数えて50人余り。相当空席が目立った。そんな中でA4判4ページの資料が配られ、市の担当課長がパワーポイントを使って1時間余り説明した。ヒロシマ五輪の基本計画は運営経費の約2割、982億円を寄付金で賄うことになっているが、資料では運営経費の明細表に載っているだけ。集金方法などは一切書かれていない。これに対して、オバマ大統領が寄付で650億円集めた事例は長々と課長が説明していた。「寄付金頼み」を前面には出さず、しかし「実現可能性」を強調するという意図がありあり。
 そのあと質疑。当初は30分の予定だったので市側は数人で質疑を打ち切ろうとしたが「もっと言わせろ」の声で延長。結局、8時終了の予定を1時間近く延ばして10人ほどが意見を述べた。このうち明確な賛成は1人だけ。あとは明確な反対か懐疑論だった。それにしても、出席者の5分の1が「俺(私)に言わせろ」というのは、かなりの確率と思える。
 鋭い質問もあった。もともと、この五輪構想は「2020年の核廃絶を祝って」というコンセプトで持ち出されたものだが、最近はさすがに「2020年核廃絶は無理だよな」という空気が伝わったのか、核廃絶ができていなくても開催、と変わってきている。「では、核廃絶がなされていない場合、核兵器保有国は参加させるのか」。これにはうなった。市側は「核保有には関係なく参加してもらう」と答弁したが、これは基本コンセプトからしておかしいだろう。しかし「核を持たないこと」を参加条件とすると、これはもろに政治問題と五輪が直結することになる。そもそも「核兵器廃絶を進めるために五輪開催」というコンセプトに無理がある。
 開催期間は8月7日から23日まで。一方で広島市は、市内のホテルだけでは宿泊施設がまかなえないと見て、新幹線1時間半圏内も宿泊可能としている。市の見積もりでは、この地域のキャパシティーは約2万6000室である(この発想もすごい。大阪や福岡から新幹線で競技場に通え、と言っているのだ)。この通りだとすると、少なくとも2万人が新幹線で移動する。これに対して「お盆の帰省ラッシュの中で2万人がどうやって新幹線に乗るのか」「それは臨時ダイヤで」「増発する余裕があるならとっくに増発しているだろ。JRはこの計画を知っているのか」「…」「それとも、五輪の観客は優先的に指定をとれるのか。そんなことをして一般の帰省客が黙っていると思うの」「…」。
 計画では五輪のための交通インフラ整備は一切せず、既存の交通システムで対応するとしている。このためにシャトルバス624台を出す。開閉会式で観客、関係者が全員、スタジアムを出るには3時間かかる(単純計算で、バスは1分間に3、4台、競技場を出るのだ。なお、市はこの件について「10バース作ります」と答弁しているが、大会経費には組み込まれていない。また10バースあったとして1バースあたり約3分に1台発車しないと3時間内の運行はできない)。この人たちが最終の新幹線に乗るには、開閉会式は遅くとも午後7時には終わらないといけない。式は8月7日の昼過ぎ、屋根もないスタジアムで観客は熱中症と闘いながら見ることになる。市側は「具体的な時間設定まではしていない」と答えていた。どう考えても、特別な輸送体制を考えないと無理なのである。特に周囲を山で囲まれ、平野部が少ない広島では(開閉会式のあるスタジアムは、市街地と山一つ隔てたところにある)。
 「バカじゃないの」という構想もある。「ポップアップスタジアム」というパブリックビューイングを世界中につくり、1000円から3000円の料金をとり、計213億円の収入を見込むのだそうだ。横断幕にプロジェクターで映像を映して、それを3000円出して、だれがわざわざ見に行くのか。10年後には3Dが当たり前になっているかもしれないし、テレビはもっと進化しているかもしれない。見たい人は自宅のテレビで見るだろう。いまから挫折が目に見えている。
 オーソドックスな反対論は次のようなものである。
 ――国民の大多数は将来に対して不安を抱えて暮らしている。行政の責任は、不安を軽減することではないか。将来にわたって希望を持って生きていけることが最優先だ。今、市にしてほしいことは企業誘致であり、働く場の確保である。
 ――いま広島市の借金は9200億円ある。毎年168億円を返している。赤字がなくなるのに54年もかかる。こういうことに時間を取らないでほしい。夕張のようになってもいいのか。
 これに対する市側の答えは、「経済効果も見込めるので」というものだった。しかし、競技場の多くを仮設でつくり、宿泊客の多くが大阪や福岡に泊まるという構想でどれだけの経済効果があるというのだろう。大会運営費4329億円のうち3分の1以上を寄付や仮設施設売却費など不安定な収入に頼る構想で、だれが夢を持てるのか。恒久的な競技施設や交通インフラ整備があれば、まだ将来への「遺産」があるがそれもない。それ以上に、そもそも「身の丈」に合わない、つまり都市力に見合わない構想だ。賛成論も書いておかなければいけないが、多くは「広島は被爆地という特別なところ。そこから平和のメッセージを出すのは意味がある」ということだろう。しかし、もともと1地方自治体が「核兵器廃絶のため」、背伸びをしてイベントを開かなければならない理由がどこにあるのか。自治体がやらなければならないことは住民の生活の安定とそれへ向けたサービスであるはず。核廃絶へメッセージを発信するのは、自治体の個性の範囲内ですればいい。五輪構想は明らかにその範囲を越えている。核兵器廃絶の推進は国の守備範囲であり、被爆地の市長のすべきことはまず、核廃絶へ動かない政府と対峙することだ。
 広島市は今月いっぱい各区で説明会を開いた後、市長が「五輪招致」を決断する。どんな決断をするか、それに市民がどう反応するか。
 今朝の朝刊には秋葉市長が「オバマジョリティー・キャンペーン」の旗を降ろさないと表明したことが載っている。9月に臨界前核実験を実施し、核抑止論を捨てないことを鮮明にしたオバマ大統領に依拠した政治姿勢を変える気がないことを、被爆地の市長が明らかにした。臨界前核実験については「オバマ大統領も完全ではないから」だそうだ。完全であろうとなかろうと、オバマ大統領は米国の大統領であり、米核戦略の中で動かざるを得ないというだけのことではないか。なぜ一歩距離を置いて見ることができないのだろう。もはやこの市長には、市民の思いを受け止めて決断し行動する力がないというほかない。

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