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SFにおけるリアルの追求~映画「第9地区」 [映画時評]

SFにおけるリアルの追求~映画「第9地区」

 

 SFだが、なんともリアルである。道具立てもだが、それだけではない。人間の置かれたシチュエーションと、そのもとでの行動が実に真に迫っているのだ。

 南アフリカのヨハネスブルグ上空に突然、宇宙船がやってくる。しかしそれは、地球を攻撃するでもなく、友好を求めるわけでもない。地球人が意を決して船内に入ると、そこには疲れ果てた異星人たちがいた。彼らは難民であり、地球にたどり着いたもののそこで力尽き、停滞していたのだ。南ア政府は彼らを受け入れ第9地区に収容する。

 エイリアンといえばこれまで攻撃的であるか、あるいはその逆に和平を求めるか、というものしかありえないと思っていた。少なくともわれわれの常識には、そのように刷り込まれていた。難民化したエイリアンとは…。意表を突く設定だ。

 20年あまりたち、第9地区はスラム化する。都市再開発のため強制移住が必要となる。彼らに立ち退きを迫るためMNU(Multi-National United=超国家機関)が乗り出し、担当者のヴィカス(シャルト・コプリー)が居住区を回るが、謎の黒い液体を腕に浴びる。体調に異変をきたし、DNAが変化する。徐々に異星人の体になっていく。

 難民として収容された異星人は結局、人間たちの差別の対象となってしまう。スラム街には黒人の犯罪組織も。黒人もまた異星人を差別する。舞台が南アであることの意味が、明らかになってくる。

 宇宙船も異星人たちの外見も、どこかの映画で見たようであり、特別意表を突くものではない。しかし異星人たちの置かれた状況とそれに対する人間の行動は極めてリアルに描かれる。SFとはいえ「絵空事でない」と思わせる秘密がここにある。

 体の変化によってMNUから追われる身になったヴィカスは、異星人たちの地球脱出に手を貸す。異星人は「3年後に帰ってくる。そのとき人間に戻してやる」と約束し、飛び立つ。そしてヴィカスは…。

 監督のニール・ブロムカンプも主演のシャルト・コプリーも、全くの無名。製作のピーター・ジャクソン(「ロード・オブ・ザリング」)が知られているぐらいだろう。しかし、それにしてはこの作りこみの確かさはどうだ。取れなかったが、2009年アカデミー賞作品賞のノミネートは納得だ。

 
 第9地区P.jpg

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のぞみ

こんにちは!

トラックバックありがとうございました★

第9地区。。。いい映画でしたよね!
主人公の言動が人間くさくてよかったです~。
そんでもって、映画観終わったあとに猫缶食べたくなっちゃったし(笑)

また遊びに来ますね★
by のぞみ (2010-04-26 13:19) 

asa

本当ですね。
猫缶食べてみようか、という気になりますね。
by asa (2010-04-26 15:02) 

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