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念ずれば花開く?~鳩山政権の「妄言」 [社会時評]

 念ずれば花開く?~鳩山政権の「妄言」

 さすがに取り巻きはご注進申し上げたようだ。「いのち」を24回連呼した鳩山由紀夫首相の施政方針演説(129日)で触れたガンジーの言葉。「七つの社会的大罪」の一つとして「労働なき富」をあげたくだりだ。即、自民党から「お前のことだろ」と突っ込みが入った。説明するまでもなく、母親から巨額の資金提供を受けたことへの皮肉である。
 「いのちを守りたい」-。美辞麗句といえばそれまで。裏打ちとなる政策は語られなかった。そんな言葉より、社会的格差是正へどんな方法をとるのか、この国の安全保障をどうするのか。なにより日本は、長期低落の流れの中にはまっている。世界第2位、ないしは第3位の経済大国などというのは過ぎ去った栄光だ。そんなときに、花見酒のごとき演説を聞いてもなあ、と思ってしまう。
 施政方針演説に込めた鳩山首相の思いは分からないでもない。が、ただちに「そうだ」と言えないのは、多分に今の民主党を覆う重苦しい空気のためだ。ハスの花は泥田に咲くという。泥が深ければそれだけ美しいハスの花が咲く。しかし裏返してみれば、きれいなハスの花の下には泥田が広がっているということでもある。
 毎日新聞の政治コラムは伝統があり、今でも一級品だ。その筆頭は「近聞遠見」の岩見隆夫。最近では「風知草」の山田孝男も光っている。けれどもやはり毎日のこの手のコラムのフラッグシップは岩見だろう。この二人が最近、相次いで民主党と小沢一郎幹事長の「風景」を取り上げた。同じ新聞とはいえ、その筆致が微妙に違って面白かった。
 まず山田の「風知草」。18日付「暗たんたる風景」と25日付「力まかせの落とし穴」で民主党を批判した。タイトルどおりの内容で「今の民主主義は十分暗い」「政治という営みには清濁併せのむ雅量も必要だ。それは認めるにしても、今の民主党はあまりに暗く、秘密が多すぎる」「民主党は踏みとどまるべき一線を越えた」と、とりつくしまがない。
 対する真打の岩見「近聞遠見」。16日付で「『小沢恐怖症』を考える」。「小沢という正確にとらえにくい怪物的な実力政治家を中心に、政界は翻弄され、時に息をこらしている。恐怖症はその一つの現象だ」と政界の陰影を描いた。言いかえれば、岩見は松田ほど一面的でない。だから中曽根康弘元首相の「現政権で光っているのは小沢君の戦略だけ」という言葉も引用する。
 「光る戦略」とは何か。岩見はここで1993年夏の細川連立政権誕生と、2007年夏の参院選圧勝を受けた大連立構想をあげる。この二つの画策を「政治家は選挙が終わると一息つくが、小沢の場合、次の手の出発点になっている。特異だ」と解剖するあたりに、岩見の持つ「メス」の鋭さがある。そのうえでこれらの動きを<一人だけの戦略>とくくり、「それに対抗するリーダーと戦略が自民になく、民主には理解者が少ない。だから光る。恐怖症にもつながるのだ」というあたりに眼光を感じる。「小沢に立ち向かう戦略家が現れないと、日本の政治は変調をきたす」ことになるだろう。
 「ソフトクリーム」の風合いが抜けない鳩山政権の支持率は「だから」というべきか、下降線をたどる。18日付朝日新聞によると、昨年末からさらに下がり不支持率とほぼ拮抗する42%まで落ちた。調査によっては不支持率が支持を上回ったという結果もあるようだ。皮肉なことに発足以来の足取りは細川内閣と酷似しているという。だとすれば、鳩山政権も最後は投げ出し? まあ、これは「たら」「れば」の話。
 鳩山演説で頭をよぎったのはオバマ米大統領である。演説はうまい。理念を語る。だが政策がない。権力者としての限界が見え始めている。したがって支持率も低落傾向にある。最新のギャラップ世論調査では50%前後で不支持率も40%台だったと記憶する。ある新聞によると最近は「チアリーダーのチーフ」と揶揄されている。もちろん心は「掛け声ばかり」。特にウォール街の受けが悪い。このあたりも鳩山政権に似ているかもしれない。もうひとつ似ているのは、政権のもたつきがそのまま対抗政党の支持率向上に結び付いていないこと。民主の凋落で自民が浮上していないのと同様に、米共和党も浮上しきれていない。このあたりは両国政治の閉塞感につながっている。
 オバマ大統領が誕生した際「覇権国家の終わりを告げる大統領か、新時代の開幕を告げる大統領か」という議論があった。19日のマサチューセッツ州連邦上院議員補選での敗北はその答えにつながる恐れがある。そうなればカーターの二の舞となり1期で幕を閉じるシナリオも考えられる。今は当面、この流れが日本政治に波及しないことを祈るばかりだ。民主党政権は日本の政治を変えてほしい。だがそれは、念ずればかなうわけではない。 
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asa

はっこうさんありがとうございました。
はっこうさんが取り上げている「ベーシック・インカム」は私も注目しています。そのうち見解をまとめてみたいと思っています。

by asa (2010-01-30 18:48) 

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